親族の死亡後の手続きのために、役所に行った際に、「法定相続情報証明制度」についての案内を受けました。「法定相続情報証明制度」に基づいて、法務局で「法定相続情報一覧図」を作っておくと、同時に複数の金融機関に相続手続きを申請できて便利ということなのですが、実際はどうなのでしょうか。
税理士なしで自分で相続手続きをした筆者の経験をもとに、「法定相続情報一覧図を取得する必要はあるかどうか」について考察します。
法定相続情報一覧図を取得する必要があるかどうか
法定相続情報一覧図を取得する必要はあるかどうかは、「相続アイテム数」「相続人数」「相続の緊急度」で決めればよいというのが、筆者の結論です。その理由は、法定相続情報一覧図を取得しない場合の相続の流れで説明できます。
例えば、相続アイテムは、証券口座1つ、銀行口座2つだとしましょう。その場合、法定相続情報一覧図を取得しない場合の相続の流れは、以下のようになります。
- A証券会社、B銀行、C銀行から相続申請書類を取り寄せ(1週間程度)
- インターネットでの請求やダウンロードを想定
- A証券会社に相続関係書類を提出(1週間程度)
- 平日に公的証明書類(被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本など)を役所で取得
- 休日に相続申請書類に記入、提出と想定
- A証券会社が公的証明書類を返却、指定口座に入金(2週間程度)
- B銀行に相続関係書類を郵送(1週間程度)
- 公的証明書類は、A証券会社に提出し、返却されたものを、そのままを使用
- 休日に相続申請書類に記入、提出と想定
- B銀行が公的証明書類を返却、指定口座に入金(2週間程度)
- C銀行に相続関係書類を郵送(1週間程度)
- 公的証明書類は、B銀行に提出し、返却されたものを、そのままを使用
- 休日に相続申請書類に記入、提出と想定
- C銀行が公的証明書類を返却、指定口座に入金(2週間程度)
このように考えると、金融機関3か所ならば10週間程度(およそ2か月半)で相続できます。
上記の手続きにあたっては、相続人の間でどの財産をどう相続するのかを決める(財産分割協議)期間が必要です。公的な遺言書があったか、財産分割協議が円滑・円満だったかで、相続財産の分割方法が明確になっていれば、法定相続情報一覧図を取得せずに、上記の「公的証明書類リレー」を選択してもよいと思います。
また、相続の緊急度が高くない、つまり、納税リミットである相続発生から10か月以内に相続税を確定申告し、納税することができるならば、法定相続情報一覧図を取得する必要はないと言えます。
法務局で法定相続情報一覧図を取得するにも、その申請にあたって、公的証明書類(被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本など)を役所で取得する手間は一緒です。そう考えると、よっぽど相続が複雑で、財産分割協議が難航して、納税リミットまでに相続する緊急性が上がってしまったというケースでもないと、法定相続情報一覧図を取得する必要はなさそうに思えます。
補足
筆者は、法定相続情報一覧図を取得せずに相続手続きしました。
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