履歴書と職務経歴書は、書類選考という最初の関門を突破するためのツールです。そこで特に重要なのは、直近の経歴の書き方です。
例えば、事業開発職だと、直近の事業開発が頓挫したことをきっかけに転職を考えるケースが多いかと思います。しかし、それを素直に書いてしまうと、リクルーターには失敗体験にしか見えません。
ここでは、転職活動中に人材コンサルタントから受けたアドバイスを紹介します。
1. 履歴書と職務経歴書の役割を明確に分ける
- 履歴書:事実の羅列(商品スペック)
- 解釈は含めない
- 退職理由も不要
- 職務経歴書:求人企業への提案書(商品カタログ)
- 社長視点の解釈で書く会社への貢献リスト
- 成果にフォーカス
- 自分という商品のROIを伝える
2. 職務経歴書は自分という商品のROIを伝える提案書
直近の業務で、下図のような事業開発に従事しているという例で考えてみましょう。
会社
┌───┼──
事業部A
│
事業部A
│
プロジェクトB
┌──┴──┐
┌──┴──┐
業務C ★業務D
あなたが所属する事業部AがプロジェクトBの開発に関わっています。プロジェクトBには、開発要素の少ない業務Cと開発要素の多い業務Dがあります。あなたは業務Dを担当しています。
ところが、前年末に顧客は不確実性の高い業務Dの打ち切りを決めました。その一方で、業務Cは数百億円の受注の見通しとなりました。
業務Dが打ち切られ、事業開発とは異なる業務に配属されることになったあなたは、転職を考えるようになりました。
・・・というような場合、直近の業務Dの経歴をどのように捉えられるかが転職活動の成否を分けます。
自分の担当した業務Dだけを見れば、「打ち切りになった」「失注した」ということになります。
しかし、リクルーターは、こういう人を採用したいでしょうか。
ここで重要になるのが、会社にとっての意味です。前述の組織図を見てみましょう。業務Dは打ち切り・失注でも、業務Cは受注しています。プロジェクトBとして、事業部Aとしての評価はどうでしょうか。
こういう場合、「業務Dが業務C、プロジェクトB、事業部Aに貢献したことは何か?」が重要です。
「業務Dは打ち切りになったが、業務Dの開発が顧客に評価され、業務Cに対する営業効果を発揮し、間接的に利益貢献した」と言えるなら、会社にとっては、業務Dも必要な投資だったことになります。
このように、職務経歴書を書く際には、(特に直近の)経歴を「会社全体の目線=社長目線」で捉え直す作業が転職活動の成否を左右します。
それでは、ここからは、人材コンサルタントから受けたアドバイスのメモをそのまま転記します。
職務経歴書の捉え方
- その人のROIが問われる
- 人事はその人を雇ったらどれだけのROIが期待できるかを見ている
- プレゼン相手に合わせてプレゼン資料の言葉遣いや構成を変えるのと同じように、相手のニーズに合わせたカスタマイズが必要
- いまのレジュメでは、だれにリーチしたいのかわからない
- コンサルと事業会社では違うし、事業会社でも営業なのかR&Dなのかによっても違う
- 何をウリたいのか(何がしたいのか)をはっきりさせる
- この人を雇うとどんなことが期待できるのかをイメージできるように
- 「技術の目利き」がウリだと言っても、企業に「技術の目利き」ができる人を買いたいニーズがなければ意味がない
- 適切な技術を導入したことによって、どのような利益を生み出せるのか
- 顧客視点で価値を捉え直す。
- あえて自分を「世の中の40代男性のうちの1人」と捉えて、他にもたくさんいる40代男性の中からあえて企業の人事が「この人」を採用する理由がほしい。
- 何でも屋のレジュメでも面接したいと言ってきたら、ワケありの会社である可能性が高い
- ネガティブな解釈を載せる必要はない
- 前述の例で言えば、「業務D」は打ち切りだが、全体で見れば「業務C」の受注に貢献している
- 「正社員採用の道が絶たれた」という転職理由もよくあるが、ワケあり人材にしか見えない。企業は本当に必要な人間なら特例を設けてでも雇うはず。
- 退職動機を載せる場合は、それが次の会社に期待を持たせる内容であるべき。そうでなければ、次の会社にその人を雇うメリットを感じさせられない。
職務経歴書のサマリー
- 特に重要
- 人事は職務経歴書のサマリーだけで判断する
- 相手にリーチするキーワードにフォーカス
- ごく限られた業界だけに価値のわかる業績は、相手によって取捨選択する
- 業界別に変える必要がある
- 「あれもこれも」の何でも屋は何もできないとみなされる
- 一番売りたいのはどれ?
- 職務経歴書そのものが、プレゼン資料
- その人のコミュニケーション力、論理的思考力の程度がわかる
- サマリーにコミュニケーション力、論理的思考力と書いても程度がバレる
3. 職務経歴書のリライトがなぜ難しいか
- 職務経歴書は募集企業へのProposal
- 自分のことを客観視することが難しい
- 自分視点が当たり前
- 社長視点、顧客視点で自分を見る習慣がない(仕事ができる人は、これをやっている)
- 仕事は目標にコミットし、チームで動く(進捗が管理される)
- 個人のことは目標にコミットしても、モチベーションの好不調も影響を受けるし、チームの目にも晒されない
- 個人のこともチームで取り組み進捗管理すれば成果が出る
- ライザップ:個人の体重にトレーナーがコミットする仕組み
- イチロー、松井:個人でサポートスタッフを雇う
- 仕事と同じパワーで取り組んだら丸3日かかる作業
4. 40代の人材市場(買い手市場)
- 即戦力かどうか=どんな実績があるか=どれだけのROIが期待できるか
- 能力・期待値ではない=ただやってきたことを書くだけなら、20~30代と一緒
- 実績=社長視点の事実
- 前述の例:「業務D」は打ち切り。そこだけ見ていると、実績ゼロ。会社全体としては、「業務Cの」数百億円の受注に貢献。社長目線で見たら、それは「事実」。
- 無理やりポジティブに解釈するのではない
- 社長視点、顧客視点でどんな価値があったのかを見直す
- 10年前の実績を強調=いまを生きていないのと同じ
- 向こう3年間でどれだけの実績を築けたか
- 職務経歴書は直近順。
- 人事は、直近の実績に魅力がなければ、その先を読まない。
- 3年間で確実に成果を出してから転職することも大事な選択肢
- 転職では、ROIのIばかり追うが、人事はRを見ている
- 自分が過去に出したRを自己評価すべき
- 事業開発で最初マイナスなのは当たり前。プラスに転じたとき、どこまで成長したか見届ける責任がある。
- 自分が担当していたポジションやタイミングでマイナスでも、同じ。
- 「業務D」のように外的要因で撤退したときでも、もしそれがなかったら、どこまで成長するはずだったのかは説明責任がある
- 苦しい作業になるが、時間をかけて向き合うべき。
- いまの職務経歴書で、いくら人材エージェントに会って求人に応募しても、成果が出ないのは目に見えている。
上記のアドバイスを踏まえたアクション
上記のアドバイスを踏まえて、転職活動の私が当時とったアクションは、下記のとおりです。ご参考まで。
- この先、自分の中のどの実績を買ってほしいのかを決める
- 自分という商品をどのように売っていこうか
- 自分という商品の開発・プロデュース
- 過去の実績を社長視点・顧客視点で捉えて、職務経歴書をリライトし、プロのレビューを受ける
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