一人あたりのCO2排出量という考え方

第6回持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP2014)~ポスト2015開発アジェンダにアジア太平洋の声を:低炭素、レジリアント、包摂的な解決策~」に参加した。

全体会合1「アジアの低炭素、レジリアントで包摂的な発展の推進:IPCC第5次を踏まえて」の中で、コロンビア大学ジェフリー・サックス教授の基調講演に考えさせられた。

国連の報告書"Deep Decarbonization"の中で、「+2℃目標の達成には2050年までにCO2排出量を一人当たり1.6tにする必要がある」ことを明示した。

それには、低炭素エネルギーへの移行が必要であり、そのための3つの柱として、再生可能エネルギー原子力CCS(CO2回収・貯留)を挙げた。

その実現には、世界の炭素市場長期脱炭素化(Long term Decarbonization pathway)が必要であり、次の施策を説いていた。

  • Carbon pricing(カーボン・プライシング)
  • Reform fossil fuel subsidies(化石燃料への補助金の改革)
  • Green Infra Investment(環境インフラへの投資)
  • Regulatory and market(法整備と市場創出)

サックス教授のスピーチで考えさせられたのは、「一人あたりCO2排出量」という尺度だ。

IPCCの5th reportでも、2tCO2 per capita by 2050(2050年までに一人あたりCO2排出量を2tまでに抑えること)の必要性を掲げているという。

地球温暖化による気候変動は、一人あたりCO2排出量の多い国が引き起こしているわけだが、その被害は必ずしも加害国が受けるわけではない。「一人あたりCO2排出量」という尺度は、そのアンフェア度の世界共通の指標になる。

日本について言えば、世界の1.7%の人口で世界の4%のCO2を排出しているわけだから、やはりアンフェアなのだ。

日本をはじめとするアンフェアなCO2排出国は脱炭素化の責任を追う。日本をはじめCO2排出国はエネルギー安全保障上、エネルギーポートフォリオからそう簡単に化石燃料を捨てられない。

そうなると、やはりCCSは必要だ。だが、Source-sink Matchingの制約からコストが嵩むであろうPost-combustion(燃焼後CO2回収)のCCSが速やかに広まるとも思えない。

そう考えると、おそらく2050年までに化石燃料を生で使わない時代が来るのだろう。

つまり、化石燃料は生産地で水素を分離する形で脱炭素化される。水素はスペラ水素のようなメチルシクロヘキサンにして輸送し、副産物であるCO2は現地で貯留するか、人工光合成に利用される。そんな時代が来るのだろう。

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