2011年8月12日金曜日

お金Ver.3:お金の仕組みの問題点

2011年8月2日、米国債がデフォルトするのではないかという懸念が高まった。米国議会は、「国債発行額の上限引き上げ」という形でデフォルトを免れた。何のことはない。単なる「問題の先送り」である。

この問題は、何も米国に限ったことではない。あらゆる国に起きうる。もちろんわが日本にも。

この問題の本質は、「各国の中央銀行が実体経済を超える額の通貨を発行できる仕組み」と「実体経済が追いつかない額の借金ができる仕組み」にあるからだ。米国でなくても実体経済が追いつかない額の借金をしたら返せる訳がない。

このコラムでは、経済屋ではない私が環境屋の観点から「お金の仕組み」を捉え、
  1. 現行の「お金(ver.3)」のメカニズム(からくり)
  2. 新しい「お金(ver.4)」の姿
の2点について走り書きする。

現行の「お金の仕組み」の問題点
「お金の仕組み」を考える前に、そもそも「お金って何なのか?」というところから確かめたい。

「お金」の3機能

お金には、大きく「価値交換」、「価値尺度」、「価値保存」の3つの機能がある。

  • 価値交換:財(モノ・サービス)と交換することができること。
  • 価値尺度:財(モノ・サービス)の価値を数値化できること。価値を価格という尺度で計れること。
  • 価値保存:時間が経過しても価値が変わらないこと。例えば、ある八百屋さんがバナナ1盛り200円で売っていたとする。今日売れ残ったバナナは、翌日には200円の価値はない。100円の値札が貼られているだろう。しかし、お金は傷まない。昭和50年の100円玉も、平成20年の100円玉も、私たちは100円の価値があると信じて使っている。
    • 「お金」の3機能のうち、この「価値保存」が曲者だ。なぜなら、この機能は「物品で持っているよりもお金で持っている方が有利」という状況を作り出しているためだ。
これら3つの機能を持ったものが「お金」だとすると、一見、「お金」そのものに問題はなさそうに思える。そこで、今度は「お金」のバージョンを振り返って、「お金」がどうバージョンアップしたのかを確かめてみたい。

「お金」のバージョン

お金Ver.1:原材料価値と価格が一致していた「お金」

人類史上初のお金は、「貝殻」や「石」のような物品貨幣(自然貨幣)、「穀物」や「家畜」などの商品貨幣だった。
私たちは英語で給料のことを「サラリー(salary)」と言う。その起源はラテン語の「塩(sal)」で、古代ローマ帝国で兵役についた市民に塩で給料を払っていた名残だ。

わが国にも似たような名残がある。例えば、福井県に旅行に行けば、「加賀百万石」の史跡があちこちにある。この「百万石」というのは、江戸時代の藩の財政規模を指す。これは「石高」、つまり「米の生産量」が通貨単位として用いられていたことを示している。

「物品貨幣」の次に登場するのが、「鋳造貨幣」つまり「コイン」だ。青銅、銅などによる鋳造貨幣が登場するのは、紀元前7世紀のリディア王国(現トルコ)だった。
鋳造貨幣がそんなに早く登場したことを考えると、物品貨幣が長く続いたのが不思議に思うかもしれない。その理由は、もともと「コインの額面価格」と「コイン鋳造量相当の金属の価値」が一致していたことに関係がある。

現在のコインは、1円玉を除いて、鋳造貨幣の額面はそのコストよりも安い。現在の私たちの感覚なら、「額面価格と等しい品質のコインなんか作ったら、コインが足りなくなるじゃないか?」と思うだろう。

その通り。足りなくなって、鋳造コストが上がったのだ。

ましてや、「お金」という語源の通り、「」のような希少な金属が使われていたら、そんなことがいつまでも続けられるはずがない。原材料価値と価格が一致していた「お金Ver.1」は、アップグレードせざるをえなくなる。

お金Ver.2:原材料価値と価格が一致しない「引換券」としての「お金」

コインの原料金属が足りなくなってくると、コインの額面価格をそのままで、より安い金属を混ぜ込んで鋳造することになる。お金Ver.1のパラダイムで生きていた人たちに、そんなことが受け入れられるはずはない。その結果、インフレーションが起き、コインが信用できなくなる。やはり信用できる「お金Ver.1」が要る。だから、物品貨幣も長生きした。

とは言っても、経済規模が拡大していけば、やはり物品貨幣では困る。どう考えても、持ち運びに不便だからだ。

そこで、登場したのが「紙幣」だ。最初の紙幣は、11世紀の宋(現中国)で登場した。紙幣と言っても、現在でいう「手形(割符)」のようなもので、民間の会社が発行していた。

ところが、これが便利だということで、その会社と無関係な取引にも使われるようになった。その後、銀行という仕組みが発明されると、銀行がこぞって銀行券を発行するようになった。これが起源になって、各国の中央銀行が発行する銀行券になっていった。

当然ながら紙幣は額面価格よりはるかに安いコストで作っているので、紙幣が普及するようになって、鋳造した金属の価値と一致しない貨幣も受け入れられるようになっていった。

お金Ver.2」が受け入れられたのは、その価値を金と交換できることで保障する「金本位制」のような「兌換性(だかんせい)」があったからだ。つまり、原材料価値と無関係でも「引換券」として機能することが国家に保障されるようになって「お金Ver.2」の時代になっていく。

お金Ver.2」は、20世紀の「お金の革命」によってあっさり「お金Ver.3」に取って代わられた。

お金Ver.3:「引換券」にもならない不思議な「お金」

複利20世紀に入ると、3段階の「お金の革命」が起きた。第1弾は、「複利」だ。

例えば、8%の複利でお金を貸して、10年後に一括返済してもらうとしたら、元金の何倍を返してもらうことになるだろうか?
2.1倍である。一括返済というのは極端だとしても、複利であれば返済額の増加は直線的でなく、このグラフのような上昇曲線を描くことに変わりはない。
つまり、複利とは、企業に事業の急拡大を迫る仕組みなのだ。だから、あらゆる商品の価格には金利が上乗せされる。複利は、経済規模を拡大し続けなくてはいけない仕組みなのだ。必然的に地球上の資源消費が加速する。

お金の革命」第1弾「複利」が資本主義経済に浸透すると、(実体経済以上に)経済規模が急拡大する。そうなると、「お金Ver.2」の「引換券」としての性格が邪魔になる。

そこで、「お金の革命」第2弾が起きる。それが「兌換性の廃止」だ。「兌換(だかん)」とは、紙幣を額面金額と同価値の金銀貨または金銀地金などの正貨と引き換えることを言う。

20世紀に入ると、世界各国が兌換制度を廃止し、「変動相場制」に移行した。「変動相場制」とは、互いの通貨で互いの価値を保障しようというものだ。1971年、ついに米国も米ドルの金との兌換制度を廃止し、完全に「変動相場制」に移行した。

これで、完全に通貨の兌換性がなくなった。通貨の兌換性がなくなることは、地球の資源量と無関係に通貨を発行できるということになる。つまり、お金が一部の国家権力者たちのさじ加減で発行できる可能性を持ったということなのだ。

こうなると、お金はもはや「引換券」ですらない。「お金Ver.3」の誕生である。

さらに「お金の革命」第3弾「金融商品の複雑化」によって、お金はついに一人歩きを始める。

20世紀半ばの米国で自動車ローンが始まった。これは現金で買う能力のない人に車を買わせる 買わせる仕組みだ。
これを機に米国ではモノを買わせる仕組みとして金融工学が駆使されるようになった。支払能力のない人にモノを買わせる仕組みの究極が、サブプライムローンだ。しかも、このサブプライムローンの債権が証券化され、様々な金融商品に組み込まれたため、どの金融商品にその債権が含まれているのか容易に把握できなくなった。
企業の債務不履行リスクを補償する「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」も似たようなものだ。昨今の金融危機でCDSを大量に売った金融機関がたちまち経営危機に陥ったこと。このことからも、いかに根拠のない金融商品だったかが露呈した。このように複雑化した金融商品は、お金の一人歩きを助長した。

「お金」は、Ver.3から「各国の中央銀行が実体経済を超える額の通貨を発行できる仕組み」かつ「実体経済が追いつかない額の借金ができる仕組み」となった。

お金Ver.3」の台頭により、「お金Ver.2」までは問題にならなった「お金」の構造的欠陥が露呈した。

お金の構造的な欠陥
板倉雄一郎さんの「お金と経済の本質 [価値を創出するものが豊かになる] 」というDVDの中で、洗面器を例にモノの価格がどのように決まるかという話が出てくる。
洗面器の原料である原油を掘り出した人が最初に値決めして、その後の工程に関わった人たちのコストが次々に乗っかって、洗面器の値段が決まるという話だ。
なんだ?ごくごく当たり前の話じゃないか?
・・・ということなかれ。地球から見ると、これはおかしい。原油を最初に出荷したのは地球である。それにもかかわらず、地球は値決めしていない。つまり、地球からの出荷価格は無料だ。
お金」は全バージョンを通じて、すべての自然資本はタダなのだ。地球から見ると、お金の仕組みに地球が参加していなければ、地球の資源消費に歯止めがかからないことは明らかだ。
お金Ver.2」までは、その流通量が地球の資源量に根ざしていた。例えば、金本位制のお金なら、「金」という資源によって規定されていた。それだけ、お金の流通量が人間の利用可能な地球の資源量に対してわずかだった。そのため、地球さんからの仕入れがタダであることは全く問題にならなかった。
ところが、「お金Ver.3」で実体経済を凌駕するお金が猛威を振るう。人間は出荷価格無料の地球さんからの仕入れを急拡大する。しかし、地球さんの提供可能な資源は有限なのだ。ここに、地球環境破壊の本質的な問題点がある。

お金Ver.3のバグ(まとめ)
  1. 地球からの出荷価格が無料:環境破壊を加速する仕組み
  2. 複利:事業の急拡大を促す仕組み=地球上の資源消費を加速する仕組み
  3. 兌換性の廃止:各国の中央銀行が実体経済を超える額の通貨を発行できる仕組み
  4. 金融商品の複雑化:実体経済が追いつかない額の借金ができる仕組み

さて、前置きが長くなった。いよいよここから、「お金Ver.4」への夢を語りたい。

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